【d!】君の犬になりたい。 (ページ22)

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彼女を一目見た時稲妻が走った気がした。人間はここまで美しいものなのか。いやむしろ人間でないと言ってくれた方が余程信用出来るくらいには、彼女はこの空間で異彩を放つ存在だった。光り輝く彼女という存在から目が離せない。

彼女が歩くただのキャバクラの通路は彼女の為に用意されたレッドカーペットを引いたランウェイにしか思えない。声をかけられる度に軽くいなして歩く様もまた絵になるくらいには彼女は素敵で、人間離れした美しさだった。

『はじめまして、Aっていいます。お隣よろしいですか？』

いつの間にか意識が飛んでいたのだろうか、彼女の顔が思っていたよりも近くにあってとても驚いてしまう。どもりながら彼女が差し出してくれた名刺を受けとる。慌てて回らない頭をフル回転させて自分の名前を言うのが精一杯だった。その俺の様は他の人からしたらとても滑稽だろう。

形のいい唇から俺の名前が出るだけで色んなところから変な汗が止まらない。あかん、思っていたより重症やな俺。差し出されたメニューをとりあえず開いてみる。何一つ頭に入っていない俺に彼女は気がついているのだろうか。

新規で立ち上げたプロジェクトが軌道に乗って、その打ち上げを開くというので来てみたら二次会まで連れ回されてしまい、挙げ句キャバクラに連れてこられてしまった俺だが、今だけは部長に感謝したい。女という生物にあまり良い思い出がないため、断ろうとした俺を無理やり引っ張ってきた部長を最初こそ恨んだが、今は賞賛したい。ナイス部長、奢りあざす。

不意に彼女がメニューを覗き込んできた。距離が一気に縮まり、思わず肩が動く。そんな俺に気づいてか気づかずか、俺の顔をみて微笑む彼女に俺の頭は混乱する。おれ今日仕事帰りやけど臭くないかな、。

『はじめましてだし、ハイボールとかど〜？値段もそんなに高くないよ！』

さっきとはうってかわって可愛らしい口調の彼女。彼女ほど美しい人だと声までとても綺麗なのか。それと比べて俺はどうだ。

zm「あ、じ、じゃあ、それにしようかな、うん、ありがとう、」

こんな気の利かない答えしか返せない。もういっそ笑って欲しかったが、彼女はまた優しく微笑むだけだった。やさしい、きれい、すき。出会って5分、オレは恋に落ちてしまったようだ。

横に座る彼女の欠点ひとつ見当たらない横顔をちらりとみる。すると彼女は作ったハイボールをこちらに差し出してくれる。あぁおれまじ今日死んでもうてもええわ。