【d!】君の犬になりたい。 (ページ28)

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あぁ疲れた。立て続けに入っていた仕事をこなし続けた彼女は2週間連続で店にたち続けていた。基本水商売は人気商売でもあるので、休日は決められている訳ではなく、自分で決められる為、各々好きなように設定している。ナンバーワンの彼女の場合は、人気も相まって日々予約が埋まり続けている。さらに大好きな祖母の延命治療と、自らの生活の為にお金は幾らあっても足りないので休日は少ない。いくらナンバーワンとはいえ彼女は貰う額も飛んでいってしまう額も同世代の女とは比べ物にならない。

文字通り身を粉にして、働く彼女の久々の休日。
服を着替える気力すら今の彼女にはない。
彼女は声を上げることも無く、すっと眠りに落ちていった。

久しぶりに彼女は夢を見た。片田舎で祖母と2人暮らしをしていた彼女は、不便なこの田舎暮らしを愛していた。隣とはいえ、何kmも離れているところに住む幼なじみも世話を焼いてくれる、この普遍的な田舎を愛していたのだ。祖母の大病が発覚して、東京に単身向かうことになった彼女を彼女の祖母の代わりに駅まで、見送ったのもまたその幼なじみだった。彼の黄色い瞳からは涙がとめどなく流れ、それを見てまた彼女も涙を流すのだった。

「いつか、俺も東京にいく。そこでまた会おうや。」

携帯なんてもの、こんな田舎にはなくて。東京に行ってしまえば連絡手段は手紙だけだが、祖母の為に多額のお金を稼ぐ必要のある彼女に余計な負担をかけない為にも、彼は自分の恋心に蓋をして。何より彼女が自分のことを好きではないのが幸いして、自分の醜い下心を全てしまって、100%彼女を安心させるために言った。

そうして別れた。生まれた時からずっと隣にいた、私の幼なじみ。あの黄色い、彼は今元気なのだろうか。ナンバーワンである彼女は、それなりの地位も、名誉も、お金もあるが、それだけが唯一の心残りだった。手紙を送る事は何度も考えたが、ペンをとってみても今更手紙を書いて話すことなんて思い浮かばなくて。何年も手紙をよこさず今更だ、何より自分の寂しい気持ちを膨れあげさせるだけだと分かっていたため、彼女もまたあの恋しい、田舎の風景を思い描き続けるのみに留めている。

病院にいる祖母から来た手紙に返事を書き、感傷に浸る。そろそろ顔を出しに行きたいな。前に会ったのはもう半年も前になる。

人恋しい夜は独りでにふけていく。