【d!】君の犬になりたい。 (ページ29)

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Aが目を覚ます。欠伸をして時計に目をやると、既に時刻は午後1時になっていて。メイクすら落とさずに寝てしまった昨日の自分への文句を言いながら、風呂に入るための支度を済ませる。なんせ今日は休日。久しぶりに出かけられることに胸が踊る。

軽くだけ化粧をして、長い黒髪ロングはそのままに。ヒールなんて履かずに、カジュアルなパンプスで、それなりに良いブランドの黒いワンピースを着る。一見地味なコーデだが、それすらもAの持ち前のプロモーションを引き立たせるための材料になってしまう。

ふらりと彼女がやってきたのは銀座。今は春の季節というだけあって、乙女ごころくすぐる色のバックや靴、洋服にコスメといったものまで、様々なブランドが珠玉の商品を所狭しと並べていた。Aはこのデパートの雰囲気が大好きだった。

彼女はお客様に自分のバッグを買わせない。それは店で働く時に自分に課したルールでもある。
ナンバーワンのキャバクラ嬢として、責任やプライドを抱えている彼女は、バッグなどの小物はお客様に優劣をつけない為にもなるだけ貰わないようにしていた。

キャバクラ嬢としてそれなりに地位を築く前は、ブランドのカバンの数やブランドバッグの新作をもっているかは、直接自分の人気のステータスに関わる。その為、他の女の子らはお客様に買っていただくことがほとんどだけど。私は自分のお金で手に入れたい。でも、あくまでこれは私のちっぽけなプライド。他の人間を巻き込む気は無いし、これはナンバーワンとしての私への私からの課題とも言えるだろう。

日々頑張る自分のご褒美として、ストレス発散として、あまり出かけない自分への枷として。(本当は運動不足解消のためが主な理由だが)

ふた月に１回程度毎回律儀に1人で買い物に出かける習慣ができた。

心のおもむくままに、きままに買い物を楽しんだ彼女は、カフェに入り、歩き疲れた足を癒していた。甘い物が大好物な彼女だが、減量のため口にする機会はとても少ない。
アイスティーを飲んで、ふと携帯を覗くとグルッペンからメールが届いていた。

gr「この間のパーティの件だが、ヘアメイクの為にオスマンとひとらんを呼んでおいた、好きにしろ。」

マンちゃんとらんちゃんの人使い荒くない？
そう思ってその簡潔にまとめられたメールにスタンプで返事を返して、また重たい荷物を持って、彼女は家へ帰っていくのだった。