【d!】君の犬になりたい。 (ページ5)

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キャバクラ帰りのチーノと俺は煙草を吸いに喫煙所を訪れた。相変わらず汚い街やな、酔いつぶれてしまった女の子が道の横に捨てられていたり、ホームレスらしき男や、時間を金で買いホテルへ入っていく男女もいる。心底汚い町だがその雰囲気に安心する俺もいる。

ut「どうやった？Aちゃんは、ええ女やろ？」

ci「はい。あんなに素敵な人だと思いませんでした。それに俺達の趣味についていける人なんですね、彼女。」

ut「あぁ、せやで、ま、俺達だけじゃないけどな。」

ぽつりぽつり言葉を交わす俺達の間を埋めるように、紫煙が立ち上ってまた消える。まだ取り出したてのたばこもまだAちゃんの匂いが残っている気がして。

ci「なんて言うか、兄さんが女にあんなに尻に敷かれてるのなんて初めて見ましたし、最初は驚きましたけど、Aさんならなんか納得できますわ、。」

ut「やろ？Aちゃんの前ではみんな等しく男、いや犬になってまうねん。飼い主であるAちゃんに認められることしか頭にない犬。」

ci「あんな行為してんのに、嫌悪感抱かさせないAさんもプロですね、さすがです。」

ut「やろお？Aちゃんに見つめられるだけで俺ほんとご飯たべれるわぁ。」

それはないです、兄さん。なんて返しながら俺も考える。彼女の俺達を包み込んでくれるようなあの暖かい瞳に初めて会うのに、すごく安心したのを覚えている。さっき別れたのに、別れたばかりなのに。

ut「もう、会いたなってくるやろ？」

心の中を見透かされたようでドキリと心臓が跳ねる。おれの考えてることが分かったのか、大先生にクスッと笑われる。なんや、大先生のそんな優しそうな顔見た事俺見た事ないねんけど。

ut「あの子はああいう子なんよ、チーノお前Aちゃんに絶対もっかい会いに行くで。近いうちに、絶対。」

俺も自分でそんな気がしている。さっき交換したばかりのメールアプリを見つめる。絵文字1つしかないそのシンプルさもまた彼女らしい。彼女の前では誰もが等しく餌を待つ小鳥のように、いつか汚されることを夢見る真っ白なキャンバスのように、未完成の塔のように、欠けたパズルの１ピースを待つように。会って数時間でそんな存在に組み込まれてしまった。

ci「責任取ってって言ったらとってくれるかな。」

ut「、？チーノなんか言ったか？」

ci「なんでもないです！そういえば兄さんこの間ショッピが〜〜〜。」

夜がゆっくりそれでも確実にふけていく。