豚足 ページ1
目の前を歩く友人の背中に縋りつきたくなるのを、ぐっと堪える。なにせこの森、暗いのだ。舗装すらされていない、獣道といって差し支えのなさそうな道を歩かされている。パンプスで。
こんな道を歩くのだったら先に教えて欲しかったが、よく見ると草が踏まれた跡があるから、この森の中では比較的楽な道なのかもしれない。陽の光が届いていない分涼しくはあるけれど、運動をしているわけなのでどうしても汗がにじむ。それを雑に手の甲で拭った。
そもそも、こんな山奥にある肉屋ってなに？
先ほどからずっと頭の中を巡っている疑問だ。ただの肉屋のバイトの面接のために、獣道を歩かされている意味がわからない。友人を問いただしたくても、口からこぼれるのは荒い息ばかりで、そんな余裕はない。足の裏が痛いし、喉も乾いている。あと、多分靴擦れも起こしているので切実に帰りたい。ちょっと、休憩しない？ どうにかその言葉を絞り出そうとした途端に、いきなり目の前がひらけた。
「ついたで」
「ああ……」
情けない声で返した私を友人が振り返って、笑う。よっぽど酷い表情をしているのかと思うと、このまま面接を受けるのが億劫だ。ナチュラルメイクも汗で崩れているに違いない。息を整えてから目の前の建物をまともに見ると、余計に面接をエスケープしたくなった。
さんさんと降り注ぐ夏の陽光にも関わらず、その肉屋は薄暗かった。隠れ家的カフェがあってもおかしく無い立地の中だと、当たり前の肉屋の外観でも不気味に見える。精肉、と赤い文字で書かれた黄色い看板の端ではカートゥン風の人間の生首が笑っている。
ショーケースに並んだ肉は、見る限り普通の豚肉だ。立地が最悪なだけで、普通の肉屋なのかもしれない。
少しずつ不安を払拭していこうとしていると、友人が店長を呼んでくると言って店の奥に入っていってしまった。私は手持ち無沙汰にショーケースを覗き込んで、値札の文字を読んだ。肩ロース、ヒレ、バラ、指……。ゆび？ 豚足のことかも。
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田中(プロフ) - 前々から気になっており、やっと今日読みました。素敵すぎました (10月19日 4時) (
レス) @page32 id: d6054e066b (このIDを非表示/違反報告)
凄惨ペロ(プロフ) - miiさん» コメントありがとうございます！拙作へのお褒めの言葉、とても嬉しいです。名残惜しいと言って頂けて、書いた甲斐があったと思えました。本当にありがとうござました。 (6月15日 20時) (レス) id: 7f89f8c794 (このIDを非表示/違反報告)
凄惨ペロ(プロフ) - 桜華さん» コメントありがとうございます。こうして無事に完結できたのは評価やお気に入りをしてくださった皆さんのおかげです。楽しんで貰えたならそれ以上に喜ばしいことはありません。本当にありがとうございました！ (6月15日 20時) (レス) id: 7f89f8c794 (このIDを非表示/違反報告)
mii(プロフ) - コメント失礼します。完結おめでとうございます！関連作ランキングから見始めたのですが、タイトルから滲み出る不穏さと、リアルでありながら綺麗に可愛らしく描かれた心情が、とても好きでした。名残惜しいですが、素敵なお話をありがとうございました。 (6月12日 3時) (レス) @page31 id: 2d3cfb07c5 (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - コメント失礼いたします！完結おめでとうございます。かわいいお名前に惹かれて読みに来たら、まさかのお肉屋さんでびっくりです！！しかし、多彩な文書によって最後までとても楽しく閲覧させていただきました。素敵な物語をありがとうございます！！ (6月11日 23時) (レス) @page31 id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
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